線画 静音と打ち掛け(しずねとうちかけ)        

 小説「衆道剣風録 五 京の夏、風吹く」より

更新 2007/08/17 線画「静音、修理とはじめて会う」追加




 静音の回想。

 静音は幼い頃、母と姉たちが楽しそうに呉服屋が持ってきた色とりどりの着物を着ていたことを思い出した。
 まだ、自分が男(を)の子だという意識があまり無かった頃。

 静音は、誰も居なくなった新しい打ち掛けが掛かっている部屋に入り、袖を通してみた。
 自分が女の子の様に可愛いと訪れる人に言われるので、こんなふうに飾り立てたらと想像してみた。

「何をしておる!」
 姉の香(かほり)に見つかった!
「ねえねえ!お母様!お藤!はよ、来てみりゃれ!」
 何事かと駆けつけた母と小さい姉は静音を見て目を丸くした!
「か〜わいい〜!」
 長姉の香がにやにやして言った。
「静音は・・・今日から我等の妹じゃ!お静と呼ぼうぞ!髪には花の飾りをつけてやろう」
 それからというもの、静音は姉たちにおなご扱いをされ父の儀太夫に苦笑いをさせた。母の若い頃にそっくりだったからだ。

 ある日、配下の海道新右衛門が息子を連れて遊びに来た。
 障子が開け放たれた客間で待っていると、女達の声が聞こえた。
「お静はどこに行った!」
「まだ化粧が済んでおらぬ!」
 そこにばたばたと入ってきた者!
 修理は可愛い女の子が入ってきたと思った!
 長い小袖を着ているため、濡れ縁と居間の敷居につまずいてぺたんと倒れて修理を見た!
 修理の十歳の心臓がどきんと打った!
 ・・・なんと愛らしい少女じゃ!古性家は美男美女の家系と聞くがこれほどまでとは!

 その少女は追ってくる跫音を聞くと、ぺたぺたと手を突いて修理の背に回り込んだ。
「お願いじゃ!隠して申せ!」
「お静!どこじゃ!・・・あ」
 客人が居るとは知らず香が駆け込んでくる。修理の背から高い声がした。
「・・・俺はお静ではない!静音じゃ!それに男の子じゃ!化粧なぞ嫌じゃ!」


静音と打ち掛け


静音、修理とはじめて会う

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