絵解き蘊蓄コーナー                               


 「衆道剣風録 六 竜胆丸(りんどうまる)」より
   第四話「燕飛(えんぴ)の舞

林梧さんからの頂き物↓トーマスの線画を再構成して頂きました。



 歴史小説や時代小説を読むと時々、XX流○○の剣 などという「秘剣」が出てきますね。例えば「眠狂四郎」の円月殺法などです。
 これらを読むと刀を回している内に斬ってしまうとか、わざと後ろを向いて敵を倒すとか、色々な「奇想天外」な技が出てきて読者を楽しませてくれます。

 でも現実にはそんな技は剣術にはありません。

 その代わり、「組太刀」と呼ばれる種々の攻めとそれに打ち勝つ形を練習します。その組み合わせは各流派に独特で創始者の工夫が盛り込まれ、秘密にされま す(その秘匿性が「秘剣」への憧れを強めたのかも知れません)。さらに複数の流派を学んだ武芸者がまたそれらを組み上げて、新しい流派を作ったりします。

 でも基本はある攻め技に対する「勝ち技」であって、実戦ではそれを自由に「砕いて(応用して)」使う事になるのです。

 この小説に出てくる「燕飛(えんぴ)」という型は陰流、新陰流に伝わる組太刀の代表的なものです。
 新陰流は後に江戸柳生と尾張柳生に別れ、あるいはタイ捨流となり、時代によって少しづつ異なったものになりますが、この「燕飛」は6つの形が切れ目無く行われるので変化を受けにくかったと思われます。

 私はこの燕飛を見て、「舞」に近いと思いました。それは攻め手、受け手が「あうん」の呼吸で進退を繰り返すからです。

 最初の形「燕飛」(組太刀の総体の名前と同じです)を踊りにしたらこうなるのでは、ということで小説中に描いてみました。

「燕飛の舞」原画 振り付け:サー・トーマス

 上の絵の左手が「使太刀(打ち勝つ方)」の静音(16歳)、右手が「打太刀(攻めて負ける方)」の竜胆丸(18,9歳か?)を表しています。二人とも絶世の美少年・美青年(トーマス好み)です・・・

 最初に竜胆丸が攻め込みますが、使太刀の静音に躱(かわ)され、喉元に太刀を突き出され退きます。
 二人とも木刀の代わりに扇子を持ち、静音は能の様にそれをやや下に向け、竜胆丸は扇子を開いて喉を守りながら後ろに引きます。

 その時二人の歩みは腰から動き、「ナンバ」の要領ですきがありません。「すき」が無いというのは、この時、どこから攻撃されてもひらりと躱すことが出来る体勢です。能も同じ原理で踊ります。

 どうです。古武道とは日本人が作った戦いに於ける美しく合理的な体の制し方なのです。

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